経営診断で見える自社の強みと弱み

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中小企業診断士の坂井です。

前回の記事では「中小企業経営の基本戦略と外部視点活用」をテーマに、経営戦略を立案する重要性やその効果、さらには具体的な戦略策定のプロセスについて解説いたしました。今回は、その続編として、「経営診断で見える自社の強みと弱み」をテーマにお届けします。

中小企業診断士などの専門家が実施する経営診断は、第三者視点から客観的に企業を分析し、普段は見過ごされがちな改善点や成長の可能性を引き出す有力な手段です。本記事では、経営診断を行う過程や活用方法、実際に診断結果をもとに経営改善計画を立てる際のポイントなどを詳しくご紹介します。

1. 経営診断とは何か?

1-1. 経営診断の目的とメリット

経営診断とは、企業の現状を多角的に分析し、経営上の課題や潜在的な強みを洗い出すプロセスです。

  • 客観的視点の導入:外部の専門家が入ることで、経営者・社員自身が気づけなかったボトルネックや可能性を発見できる。
  • 強みの再確認:日々の業務に追われる中で埋もれていた、自社ならではの独自資源・ノウハウを再認識できる。
  • 課題解決の優先順位付け:問題を体系的に洗い出し、経営資源の最適配分へとつなげる。

1-2. 中小企業診断士の役割

中小企業診断士は中小企業支援のスペシャリストとして、公的機関の相談窓口や個別コンサルティングなどで数多くの企業を診断し、経営者の意思決定をサポートしています。経営全般に関する知識やノウハウを持ち合わせているため、財務・人事・マーケティング・業務プロセスなど多角的なアプローチが可能です。

2. 経営診断のステップ

実際に私たちプロの経営コンサルタントがお客様の企業を訪問し、経営診断を行う際の代表的なフローは以下の通りです。

2-1. 事前ヒアリングとデータ収集

  • 経営者との面談:経営理念や今後のビジョン、現状の課題感などをヒアリングし、診断のゴールを共有します。
  • データ分析:財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書など)や社内文書、顧客データ、販売実績などを整理します。

2-2. 現地調査・スタッフへのインタビュー

  • 現場視察:実際に事業所や工場、店舗などを拝見し、業務フローや人の動き、設備の稼働状況などを把握します。
  • スタッフインタビュー:経営者だけでなく各部署のリーダーや担当者から、生の声を聞きます。現場レベルでの課題や成功要因など、数字だけでは見えない部分を深堀りします。ただし、この部分についてはすぐにとりかかるには社内の体勢が充分に整っていない、という場合等は省略することも多くあります。

2-3. 分析と課題の抽出

  • 財務分析:収益性、安定性、生産性などの指標を用いながら、資金繰りや収益構造の問題点を明確にします。
  • 市場・競合分析:市場シェア、競合他社の動向、顧客ニーズなどを整理し、自社の強み・弱みを相対的に評価します。
  • 業務プロセス分析:受注から販売、アフターサービスに至るまでの一連のフローを可視化し、改善余地があるポイントを探ります。

2-4. 診断結果の報告と提言

  • 総合評価:集めた情報や分析結果をもとに、企業の強み・弱み、機会(チャンス)・脅威(リスク)をまとめます。
  • 具体的な改善策の提示:課題解決に向けて実施すべき施策を提案します。優先順位や予算配分、実行スケジュールなど、できるだけ具体的に示すことが重要です。

3. 自社の強み・弱みを客観的に把握する方法

3-1. 数値分析から見える弱点

財務状況を客観的に見ると、思わぬコスト構造の歪みや資金繰りのリスクが浮き彫りになることがあります。たとえば、在庫回転率が低いことで資金が滞留し、売上はあるのに利益やキャッシュが増えない状況に陥っている企業も少なくありません。
こうした問題は、日常の視点では見落とされがちですが、財務諸表を体系的に分析することで早期に改善策を打てるようになります。

3-2. 市場ポジションの比較でわかる強み

自社の売上だけを見て「まだまだ伸ばせるのではないか」と思っていても、実際に競合他社や業界平均と比較すると、想定外に高い優位性を持っている場合もあれば、逆に想像以上に出遅れている場合もあります。
定量・定性の両面から競合比較を行うことで、どの部分に競争力を発揮できるのか、あるいはどこを補強すべきかが明確になります。

3-3. 業務プロセスや組織体制でのチェックポイント

  • 業務フローの無駄
    何重にも重なった承認プロセスや、IT活用が不十分な業務がないか点検します。
  • 人材配置の最適化
    各担当者が得意とする業務と実際の配置が一致しているかを確認し、必要に応じて再配置や研修計画を検討します。
  • コミュニケーションと情報共有
    縦割りや部署間の連携不足がないか、会議体や報告ルールに過不足がないかをチェックし、組織としての生産性向上を目指します。

4. 診断結果を活かす経営改善計画の立て方

4-1. 改善課題の優先順位付け

経営診断を通じて見つかった問題を全部まとめて解決することは難しい場合がほとんどです。そこで、投資効果の大きさ経営リスクの大きさなどを基準に、以下のように優先度を設定して計画を組み立てます。

  • 緊急性の高い課題:資金繰り危機や重大なクレーム対応など、早急な対処が必要なもの
  • 重要性の高い課題:長期的な成長に直結する組織改革や新規事業立ち上げなど
  • 改善余地のある課題:比較的負担が少なく、効率化や利益率向上が見込めるもの

4-2. 具体的な行動計画とKPI設定

たとえば、在庫回転率を3か月後に20%改善する新規顧客獲得数を半年で1.5倍にするといったように、誰が・いつまでに・何を目指すのかを明確にした行動計画を立てます。

  • KPI(重要業績評価指標)の設定:売上や利益だけでなく、在庫回転率やリピート購入率など、より戦略遂行の度合いがわかる指標を設けます。
  • PDCAサイクルの導入:計画(Plan)→実行(Do)→検証(Check)→改善(Action)を定期的に回し、状況に応じて計画を修正します。

4-3. 社内浸透のポイント

診断結果や改善策は、経営者や管理職だけが理解していても成果にはつながりません。社内全体で情報を共有し、納得して動ける体制をつくることが重要です。

  • 全社員への周知・研修:なぜ改善が必要で、どのように進めていくのかを丁寧に説明し、共通認識を醸成。
  • 部門別のリーダー育成:実行段階で指示待ちになるのではなく、各部署ごとに主体的に動けるリーダーを育てる。
  • 継続的なモニタリング:進捗状況を定期的に確認し、問題があれば早めに手を打つ。

5. 中小企業診断士による支援で成果を高める

私たち中小企業診断士は、これまで多くの企業を診断し、経営改善につなげる経験を積んでいます。客観的な分析力多角的な知見を活かし、以下のようなサポートを提供しています。

  1. 経営環境分析
    業界トレンドや競合他社の動向を把握し、自社にとって最適なポジションを見つけ出す。
  2. 経営課題の整理と優先順位付け
    経験に基づくフレームワークを活用し、課題解決に向けた道筋を的確に設定。
  3. 具体的な行動計画の策定支援
    目標・指標(KPI)の設定から、実行計画の立案、フォローアップまで伴走。
  4. 補助金・金融機関対応のアドバイス
    改善計画や新規事業を進めるための資金調達方法についてもサポート。

6. まとめ:客観的診断を自社の未来へ

中小企業が自社の強みや弱みを冷静に見つめ直し、的確な経営戦略を打ち出していくためには、専門家による経営診断が有効な手段となります。日常業務に追われていると、どうしても経営状況の全体像を把握しにくくなりますが、外部の視点を取り入れることで一気に問題やチャンスがクリアになるケースが少なくありません。

プロの経営コンサルタント・中小企業診断士は、第三者だからこそできる客観的な分析と、結果を出すための実践的なアドバイスをご提供します。もし、「自社の現状を客観的に知りたい」「新しい改善策を探りたい」「強みを活かしたいが何から始めればいいか分からない」と感じているようでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

皆さまの「気づき」と「腹落ち」、そして更なる「成長」のきっかけとなり、共に次のステージへ歩むパートナーとなることを心より願っております。

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