中小企業経営の基本戦略と外部視点活用

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1. はじめに

中小企業診断士の坂井です。

中小企業の経営者が事業を進める上で、明確な経営戦略を持つことの重要性は年々高まっています。市場の変化が加速し、競合他社との競争も激化する中で、どのように自社の方向性を定め、計画を実行していくかが生き残りの鍵となります。
本記事では、経営戦略立案の重要性や戦略策定による売上増加の効果を具体的な調査結果を踏まえて解説するとともに、実際の成功事例やビジョン・目標設定から行動計画への落とし込み方、そして中小企業診断士が支援できるポイントをご紹介します。

2. 経営戦略立案の重要性

2-1. 経営戦略と企業成長の関係

多くの成功する中小企業に共通しているのは、「自社の強み・方向性を明確にし、綿密な戦略を練っていること」です。経営者の“”や“経験”に基づく舵取りだけでは、近年の急激な市場環境の変化に対応することは難しくなっています。
一方で、経営戦略を明確に策定している企業は、行き当たりばったりにならず、どのような変化が起きても自社の軸を見失わない強みを持ちます。

2-2. 調査結果に見る戦略策定の効果

実際に、中小企業庁などの調査によれば、経営戦略を明確に策定している企業は、非策定企業より約9.4ポイント売上増加の割合が高いというデータが示されています。
これは、戦略を策定することで以下のようなメリットが得られるためと考えられます。

  • 目標達成に向けた具体的なアクションがとりやすい
    何を・いつ・どのように行動すべきかが明確になるため、社員全員が同じ方向を向ける。
  • 経営者の意思決定が早くなる
    戦略を軸に判断基準がはっきりするため、迷いが生じにくい。
  • 経営環境の変化に柔軟に対応できる
    予測不能な事態が起きた際にも、戦略があることで方針修正をスムーズに行える。

3. 戦略策定プロセスのポイント

3-1. ビジョン・目標の明確化

経営戦略を策定する上で最初に行うべきは、企業が目指す将来像(ビジョン)と具体的な数値目標(売上高・利益率・顧客数など)を設定することです。
ビジョンを“社員全員が共有できる形”で描くことが大切です。抽象的な理想論で終わらせず、数値目標や具体的な状態として示すことで、日々の行動に落とし込みやすくなります。

3-2. 外部環境・内部資源の分析

次に、ビジョンを実現するうえで必要な情報を整理します。

  • 外部環境の分析(PEST分析や5フォース分析など)
    市場規模や競合状況、顧客のニーズや業界動向などを客観的に把握し、自社にとっての機会(Opportunity)や脅威(Threat)を洗い出す。
  • 内部資源の分析(自社の強み・弱みを整理)
    自社が持つ経営資源(人材、技術、資金、ブランド力など)を可視化し、競合他社に対して優位性を発揮できるポイントを特定する。

3-3. 戦略の立案

外部環境と内部資源を踏まえて、どの顧客層にどのような商品やサービスを提供するかを明確化します。戦略の方向性として、たとえば以下の選択肢が考えられます。

  • 製品開発戦略:新製品や新サービスの開発に注力
  • 市場拡大戦略:既存製品・サービスを新しい地域や顧客層に展開
  • 差別化戦略:競合他社が真似できない独自の強みを打ち出す
  • コストリーダーシップ戦略:効率化や原価低減による低価格モデルを確立
  • 集中戦略:特定の市場セグメントに特化してリソースを集中

3-4. 行動計画の具体化

立案した戦略を、「誰が」「いつまでに」「何をするのか」という具体的なアクションに落とし込みます。部署や担当者ごとに担当業務や進捗管理の方法を明確にし、定期的にレビューしていくことで計画を継続的にブラッシュアップできます。

4. 戦略立案の成功事例

4-1. 地域密着型企業の販路拡大例

ある地方都市で飲食店向けに食品加工を行っていたA社は、市場環境分析から「観光客向け土産用商品」の需要が拡大していることに着目しました。そこで自社の強みである“地元農産物の加工技術”を活かして新商品を開発。さらに観光客が多い地域の小売店と連携することで販路を広げた結果、売上が前年対比で20%以上伸びる成果を挙げました。

4-2. 製造業の特定ニッチ分野特化例

精密加工業を営むB社は、大手企業との価格競争に苦戦していました。そこで「高精度の試作品に特化した受託加工」という集中戦略をとり、研究開発部門を持つ企業にアプローチ。自社の高い技術力をアピールし、少量多品種・高精度の試作品製造を強みにしたことで、安定的な受注を獲得できるようになりました。

5. 経営戦略策定における中小企業診断士の活用ポイント

5-1. 第三者視点からの客観的アドバイス

経営者自身が自社の強み・弱みを客観視するのは難しい場合があります。中小企業診断士は、第三者の立場から企業の現状を分析し、経営者が気づきにくい課題や改善点を指摘することで、より精度の高い戦略策定をサポートします。

5-2. 経営環境分析のサポート

PEST分析や5フォース分析、SWOT分析など、経営戦略を立案するうえで必要な外部環境・内部環境の整理を体系立てて支援します。経験や知見を活かし、効果的な分析フレームワークの導入や活用を手伝うことで、戦略策定のスピードと精度を向上させます。

5-3. 計画実行のフォローアップ

戦略を立案して終わりではなく、**実行・検証・改善(PDCAサイクル)**を回すことが大切です。中小企業診断士は、定期的な経営相談やモニタリングによって、計画がきちんと進んでいるかを確認し、必要に応じて軌道修正を行います。

5-4. 補助金・融資活用のアドバイス

新しい戦略や事業を進める際には、資金調達が課題になることもしばしばあります。中小企業診断士は、補助金・助成金制度や金融機関からの融資など、最適な資金調達手段の情報提供や申請サポートも行っています。

6. まとめ

中小企業が成長していくためには、自社のビジョンをしっかりと描き、外部環境や内部資源を分析したうえで明確な経営戦略を策定することが必要不可欠です。実際に、戦略を立てている企業ほど売上が増加している割合が高いという調査結果も示されており、その効果は具体的なデータでも裏付けられています。

しかし、経営者ひとりで戦略立案を行うのは簡単ではありません。そこで役立つのが、第三者視点を持ち専門知識を有する中小企業診断士です。市場分析から戦略立案、実行フォローに至るまで伴走支援を受けられるため、経営者がより本質的な経営判断に集中しやすくなります。

もし、「自社の戦略が曖昧になっている」「将来の方向性が定まらない」「新規事業を考えたいがどう進めていいか分からない」と感じているなら、ぜひ中小企業診断士や地域の商工会・商工会議所への相談を検討してみてください。企業の成長に直結する戦略づくりを、一緒に進めていきましょう。

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